

iPhone 15のカメラ機能にかなり衝撃を受けた。
ここ10年以上、仕事の関係で毎年iPhoneを買い替えるのだが、新機種になっても大して驚かなくなって久しい。カメラ機能はだいぶ前から十二分に高画質だった。
だからiPhone 15にも特に期待はしていなかったのだが、このワンコの写真を撮って、見て、驚いた。なんでも、犬、猫、人が画角に入っていると勝手にポートレートモードで撮影されるらしく、ボケ量やピント位置が後から変えられるのだ。
しかも、明らかにこれまでよりも被写界深度の表現が自然になって立体感が出ている。被写体の背景からの分離の緻密さ、滑らかなボケのグラデーション。


この2枚は同じ写真だが、純正写真アプリでピント位置を前後してみた。

一眼ミラーレスの大口径単焦点レンズのような描写も出来る。これなんかは、ぱっと見ではFE 50mm F1.2 GM で撮ったかのように見える。
もちろん厳密に見るとアラはある。鉄棒が不自然にボケていたり、前ボケの一部にピントがきてたりするのだが、何も考えずにパッと撮影するだけでこんな表現ができるのだから、カメラが売れなくなるわけだ。これまでは、そうは言っても一眼カメラの方が…と思っていたのだが、遅ればせながら降参だ。

しかもこいつも後からいくらでも被写界深度を変えられる…
私の所有するミラーレスカメラでもフォーカスブラケティング機能を使い、ピント位置を後から変えられる機種があるが、面倒くさくて使ったことがない。もちろんPhotoshopなどのソフトでも出来るのだろう。でもiPhoneはそれを誰でも簡単に、なんなら意識すらさせずに使えるようにした。きっと数年経ったら、「え、なんでこの写真ピント変えられないの?」 と人々は思うのだ。スマホフォトが写真文化のデファクトになる。(いや、すでになっている)。

iPhone 15 Pro Maxには5倍ズームもあり、35mm換算で120mmのようだ。これも十分使えるレベルだ。
スマホでは写真を撮る所作の喜び、楽しさがほとんどないから、M型ライカやNikon Zfの方向性は、カメラという機械の未来の希望なのだろう。スマホフォトはカメラというソフト/アプリとSNSというプラットホームでガンガン新しい写真文化を作り出している、すなわち写真は機械(ハードウェア)vsソフトウェアで進化を競っている。
そう考えていくと、過去の遺物となりつつある100%機械頼みのフィルムカメラこそがカメラ機の未来なのだろうか?フィルムカメラで印刷した写真には、AIの付け入る隙もないしアプリで加工もできない。
日頃、カメラの未来とか写真文化とか、そんなことは考えもしないのだが、レンズ交換式カメラは業務用か、一部の人の道楽道具になってしまうのだな、カメラ機はどうなっていくのだろうか ということを考えさせてくれたiPhone 15であったのだ。そして、フィルムカメラに否定的(というか、撮影したフィルムをデジタルデータ化することに否定的という方が正しい)なフィルム世代の私が、少しだけフィルムカメラに興味が湧いてもきた。
